やんわりブログ

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適応障害の僕が復職を目指して職場に行った 後半

朝目覚めたけど布団から出ず、まだ寝ている小さな息子を自分の体に引き寄せて抱きしめる。そのままの状態で全身に意識を通して捜索し自分を確かめる。休職する前には必ずあった通勤に対する恐怖感は不思議と無かった。仕事に行っていた時に、僕が目を覚まして必ずやっていた事だ。目覚めたら自分の体に不具合が無いかを確かめる。それはいつからか習慣になっていた。休職中はあまりやっていた記憶がなかったのだが、今日からは毎朝やることになるだろう。そう、今日は復職面談の日だ。

引き寄せた息子がまだ寝ぼけているのでこのまま一緒にウトウトしていたいが、生理現象には勝てないので息子に一声かけてしぶしぶトイレへ。何気ない朝の光景に助けられて出勤まで時間を潰す。今日はすこぶる晴れている。

コーヒーを淹れてタンブラーに注いだら少し早めに出発する。久し振りの行ってきますを家族に伝え職場へ向かう。早めに出たのは、道路は相変わらず雪で混雑していて、通勤に時間がかかりそうだったことと、心の中を整理したかったから。車を走らせながら社員に会ったらなんて言おう、とか顔なじみだった門衛さんとの挨拶はどうしようとか、不安の一部を整理する。普段であれば空気の存在のように当たり前にこなしていた事に、今は準備が必要だった。

職場に着いたら門衛に顔なじみの方がいて久しぶりの会話。先方は、僕が何故職場に来なかったのか、詳しくなくても概要は分かっている様子で明るく激励してくれた。そんな暖かい対応に職場への不安が少し安らぎ目尻が滲む。いつもの駐車場に車を停め、5分ほど休憩をする。他人の目を気にしない、面談に集中する、と自分に言い聞かせて面談が行われる会議室に向かう。ここを右に曲がれば社員が沢山いる部屋だなぁと半ば諦めにも似た感覚で足を進めたが、運が良いのか気を使われたのか定かではないが所長と受付の方以外は席を外していた。そんな状況にも助けられスムーズに面談が始まる。内容は書かないが、所長の対応は僕が想像していたよりもだいぶいつも通りで、7割は雑談だった。普段であればちょっと鬱陶しかった昔話も今日ばかりは癒された。自分がこの環境に慣れるためにも、自分がこの場所にいてもよいと確かめる為にも、所長の昔話にかかる時間は僕を救った。

1時間弱の面談を終え、内容をお互いに確認したら会議室を出る。来た時よりも社員が戻ってきていたけど、これまた偶然か気を使われたのか誰とも目を合わすことなく部屋を後にした。

今から帰る事を妻に告げ、車を走らせる。緊張した。でも頑張ったんだ。通勤も部屋に入ることも所長と話すことも。今の僕には精一杯と思うことができたんだ。今日は自分を褒めて許してやろう。そう思うとやっと安堵が込み上げてきた。

昨日から感じていた不安をクリアして、また次の壁に進めたという小さな自信を少しずつ積み重ねていこう。人には個人差というどうしようもない、埋めようのない差があることを受け入れて、自分を蔑むことなく過ごしていくことができるという感覚は、きっと今の僕の心の状態に近いのかもしれない。この感覚は忘れたくないと強く思った。